« | »

2014.04.14

【2014-04-14(mon) amori】

さて、僕のところへ世界で二番目に忙しい男から連絡があった。
その名をジェイソン・マイケル・ジャクソンという。
ちなみに彼の親父の名前はマイケル・ジャクソンである。
言わずもがな、シベリアン初期の頃にステージ脇でいつも客に向かって罵声を浴びせかける為だけのメンバーだった。

そう、シベリアンニュースペーパーは最初はそんな感じだった。

ジェイソンには僕の連絡先を教えていなかったので、
どうやらバンドのinfoメールの方に阿守に伝言しておいてくれとメールを入れておいたみたいだ。
infoメールは平尾が管理しているので、平尾を経由して連絡が来た。

ジェイソンが言うには「自分は忙しいなか日本に来日してる。4月7日から14日までの一週間しか会えないから、奇跡的にタイミングが合えば、お前に会うことも可能だ」というような内容だった。

素敵な男である、バカは世界共通であることの証明の根幹を支える男だ。

結局、僕は土曜までジェイソンが来ていたことを忘れていて、
土曜にフトしたきっかけで思い出して、メールに書かれていたジェイソンの電話番号にかけてみた。
すると、当然のことながらジェイソンが出る。
今、どこにいるのかと訊くと京都にいるという。明日の朝には名古屋に行くと余計なことまで付け足して教えてくれる。

明日の名古屋帰りを見計らって、連絡してこいと言われたが、僕はそれもすっかり忘れてしまい、ジェイソンから着信があったのにも気付かず夜になっていた。
世界で二番目に忙しい男に対して、連絡が遅れたことを詫びると、
「俺のパーフェクトの人生の中で、ひとつだけ汚点がある。それはお前を友達に選んだことだ」と言って下さいました。
光り輝く君のライフスタイルに僕のような凡人は付いていけないから、どうか君、光の速度で帰国してくれたまえと伝えたら、流暢な日本語で罵声が飛んできた。

取り立てて、それ以上の話しも何もない。

ジェイソンが来て、帰った。イッツ・オーバー。
見出すべき教訓の何ものもなければ、ドラマもない。
そう、チェーホフ的なニュアンスの話しなのである。

高校で英語教師をしていたジェイソン。
その高校のことで生徒に教えることを「俺のような天才に取ってはデイケアのようなもの」と豪語していた、ジェイソン。
そんな会えるのが奇跡的なジェイソンとバッタリと渋谷で遭遇したときは笑ったものだ。見つけたのは雄作だったか、あれジェイソンっぽいですねと指差した先には本物が来てボンヤリと歩いていた。
渋谷の人混みで風景と化していたジェイソンを見つけた雄作も大したもんだが、そこにいるジェイソンも稀代のトリックスターであろう。

そんなジェイソンが人種の垣根的な問題による失恋で、
とんでもなく意気消沈したとき、その気持ちを心に留めておいても体に毒だから、しっかりと葬るが良かろうと僕が提案したときもあった。
君は詩人だから、君の気持ちを詩に託して大勢の前で読み上げれば、君が一人で抱えることはなくなるよと軽い気持ちで言ってみたら、次の日にはとんでもない量の詩の束が出来上がっていた。

チャイコフスキーは学生時代に、学校の先生から課題を出されたら他の生徒が一曲書くのに必死なのに、一人で2ダースほどの曲を書いて提出したそうだ。
ーーーそれと同じではない。
この話しは全く別のものである。

難波ロケッツというライブハウスのステージにテーブルと椅子を用意して、詩の朗読の為のマイクを設置して、自由に朗読するがいいと伝えたら、ジェイソンはBGMがあったほうがいいとリクエストしてくる。
僕が希望は何だと訊くと、気分を昂揚させるものなら何でもいいよ、阿守に任せるというのでおっさんのボーカルが叫びまくり、雑音なのか音楽なのかよく解らない音楽を演奏してあげた。

(BGM)
ズダズダズダズダ!グォオオオオオオ!ギャアアアアア!ボゲェエエエエ!

(ジェイソン)
●ちゃん、もしも僕に翼があるのなら、●ちゃんがどこにいようとも…

(BGM)
ドツドツドツドツ!ウワァァァァァァアアアア!ギョエエエエエエエ!

(ジェイソン)
どこにいようとも、どこにいようとも、どこにいようとも…、あの、これマイク入ってますか?自分の声が全く聴こえないんですけど…。

(BGMのボーカル)
おい、外人!何をさっきからグドグド言うとんねん!暇なんやったら手品でもせえ!

(ジェイソン)
お前ら、お前らに、俺の気持ちが解ってたまるかああああ!!!!

というものであった。これは僕がこれまでの生涯において、お腹がよじれるほど笑ったエピソードのトップ5には入るであろう、取って置きの思い出である。

それ以来、ジェイソンは僕に恋愛相談をして来なくなった。
それでいいのだ恋愛とは相談するものではなく、相談する余地も猶予もないことを恋愛というのだから。

自宅にやってくる小鳥を見て、ある人がこう言った。

「いったい彼らはどこへ行き、どのような死に方で終わるのか、私はいつもそれを考える。そして、ごくさりげなく土に還元してゆくその孤独な死に、人間のどんな葬式も及ばない荘厳さを感じ、粛然とさせられる。」

今日は帽子を買ってみた、6480円でとても自分に似あってるなと感じた。